デザイナー
Y.T.
2000年前の石碑や古文書に始まり、企業のロゴマークから、映画のポスターまで、その利用範囲が広いことで知られるTRAJANフォント。
今回はBOELのロゴに身近な関係のTRAJANフォントについてご紹介します。

TRAJANというフォントを皆さんはご存知でしょうか?
読み方は「トラジャン」もしくは「トレイジャン」と読みます。堂々とした縦比と彫刻的な線の美しさが特徴で、古くて新しい欧文書体の王道であり、太古から存在し、変わることなく愛されてきた歴史あるフォント。その誕生から現在の姿までを一緒に辿っていきましょう。

当時ローマを統めていたトラヤヌスという皇帝のために使われていた文字がTRAJANです。 トラヤヌス帝はローマの領土を最も拡大させた人物です。ローマの市街地の中心に彼の墓所となった記念碑があります。その記念碑の文字が元になりTRAJANが作られました。
現在、世界中で多くの人が利用している「Trajan Pro」は、1989年AdobeのフォントデザイナーのCarol Twombly(キャロル・トンブリー)によってリファインされたフォントです。

当時、Trajanフォントの原型となった文字は石に刻まれていました。古代ローマの職人たちは石に文字を彫る前に、まず平筆で下書きを描いてから作業をしていました。この下書きこそが、のちの活字やフォントデザインの原点ともいえる造形の出発点です。実際に先端が平らな平筆でローマンキャピタル(Roman capitals)文字を書くと筆を傾ける角度や向きによって、線の太さに自然な強弱が(stroke contrast)が生まれることに気づきます。縦のストロークが太く、横のストロークが細く見えるのは、偶然ではなく筆の動きが生んだリズムなのです。この筆致の力強さと繊細さのバランスが、Trajanフォントの持つ優雅で品格ある印象につながっています。 デジタルフォントとして再現される現代でも、Trajanはその筆の流れを感じさせる有機的なフォルムを保ち続け、建築碑文や映画ポスターなど、重厚感を求めるデザインで今なお多く使われています。 つまりTrajanは、「筆から石へ、石からデジタルへ」と時代を超えて受け継がれてきた、書と彫刻が融合したフォントデザインなのです。

今ではチョコレートの代名詞とも言われる、高級チョコレートブランド「GODIVA(ゴディバ)」。
そのブランドロゴに使われているのが、Trajan(トラヤン)フォントです。
GODIVAのロゴは、Trajanフォントの持つ威厳・品格・永続性(timeless elegance)がブランドの世界観を支えています。
筆跡から生まれた柔らかな曲線と、石に刻まれたような力強いエッジが絶妙に調和し、「上質」「伝統」「信頼」といった印象を視覚的に伝えています。
単なる装飾ではなく、フォントそのものがブランドの物語を語る―
まさにTrajanは、GODIVAの象徴的なアイデンティティを形づくる要素のひとつと言えるでしょう。
このように、Trajanフォントは古代の美学を現代のブランドデザインへと橋渡しし、GODIVAのロゴを時代を超えて輝かせる存在となっています。
その洗練された文字のフォルムは、グラフィックデザインの分野でもしばしば「高級ブランドタイポグラフィの理想形」として語られています。

TRAJANはひとつひとつの文字の大きさがバラバラのため、使い方には注意が必要です。
例えば、「E」「I」のような文字は横幅が狭く、「N」「O」のような文字は横幅が広く作られています。
「J」「Q」の下部がベースライン(欧文書体の並び線)から長く飛び出ているのも特徴です。小文字(スモールキャプス)がなく、大文字しかないこと、そして文字の縦横比が違うので可読性を考えると文章などでの使用は、おすすめしません。
組むとしても、文字間がバラバラになるような箱組よりもセンター揃えが無難です。
文字自体の完成度が高いので、タイトルやロゴで使用するとこのフォントの特徴が発揮されます。
タイトルやロゴを組むときは、文字間をゆったり広くとるとバランスがとれ、高級感や厳格なイメージを演出することができます。

BOELのロゴは古典的なローマン書体の美学を現代のブランドアイデンティティに再構築したデザインです。
シンボルのない文字のみのシンプルなロゴですが、重厚かつ安定感のあるロゴです。
TRAJANは有料フォントです。
Adobeライセンスをお持ちの方はillustratorなどのアプリケーションをインストールすると標準でインストールされているフォントですので、
デザイン関係のお仕事の方はお持ちかもしれません。
CinzelやMarcellusなどの類似フォントはありますがGoogle Fonts※1※1Googleが提供する無料で利用できるフォントサービス。日本語や英語を含むさまざまなフォントを無料で使用することができ、商用利用も可能。多くのサービスで広く活用されている。でも使えるといいですね!
文字の歴史やフォントの特徴を知ることで、デザインの参考になればと思います。
出典:GODIVAホームページ
出典:Wikipedia
※1 Googleが提供する無料で利用できるフォントサービス。日本語や英語を含むさまざまなフォントを無料で使用することができ、商用利用も可能。多くのサービスで広く活用されている。
今日もあなたに気づきと発見がありますように