アートディレクター
Y.T.
私たちBOELのコーポレートカラーは「白」です。 それは、あらゆる色を受け入れ、調和し、 新しい色を生み出すための「余白」を象徴しています。 コーポレートカラーである「白」から、いま私たちが感じている想いを書きました。

ささやかでいい。
目立たなくてもいい。
私たちは、デザインの力を信じています。
自分たちが懸命に生み出した表現が、誰かの心を動かし、
その人の人生がほんの少しでも良くなることを信じて。
いつか「ありがとう」と言われるような仕事を、
日々、妥協なく積み重ねていく。
BOEL Inc.は、「コミュニケーションを“きもちよさ“と”ここちよさ“から考える」を掲げて、
15年を迎えました。
私たちが大切にしてきたのは、声を大きくすることでも、
強い主張で相手を圧倒することでもありません。
むしろ、相手の心に静かに染み込むような、やわらかな説得力でした。
SNSが主流となり、情報が絶えず流れ続ける時代。
短い言葉や強い刺激で注目を奪い合う「アテンション・エコノミー」が
社会を覆っています。
過激な表現、断定的な意見、憶測をもとにした記事。
そうした発信が「分かりやすさ」や「話題性」として支持され、
共感と反発を呼び、議論が過熱する。
そして発信者は、自らの立場を明確にすることで、
存在意義を確保していきます。
多様な価値観が交錯する世界では、
「どちらの側につくか」が求められることも多いでしょう。
けれど、私たちはその流れにただ迎合したくはありません。
分断を「悪」と断じる風潮にも、違和感を覚えています。
子ども向けの物語では、「正義」と「悪」が明確に描かれます。
それは理解しやすく、安心できる構造です。
けれど、現実の世界はそう単純ではありません。
白と黒の間には、無数のグラデーションが存在します。
正義の中にもエゴがあり、悪の中にも痛みがある。
にもかかわらず、私たちは“同じ色でいること“に安心を求め、
白黒をつけることでしか秩序を感じられない社会に
どこか息苦しさを感じています。
BOELのコーポレートカラーは「白」です。
それは、あらゆる色を受け入れ、調和し、
新しい色を生み出すための「余白」を象徴しています。
白には、清らかさや純粋さといった印象があります。
しかし、理想の白であり続けるということは、
常に自分たちのあり方を問い続けるということでもあります。
白を掲げるには、潔癖である勇気と、汚れてもなお立ち返る覚悟の両方が必要です。
異なる考えを持つ人と出会い、対話を重ねる中で、
自分たちの白が揺らぐこともあります。
それでも、その揺らぎの中にこそ、新しい発見が生まれる。
純白だけを求め続けては、世界が単調になってしまう。
さまざまな色と混ざり合うことでしか見えない“新しい白“があると、
私たちは信じています。
排除することだけが正解ではありません。
けれど、あらゆる違いを無条件に受け入れれば、
どこかで歪みや亀裂が生まれることもある。
理想と現実のはざまで、迷い、立ち止まりながら、
それでも人の心に寄り添う答えを探し続ける。
そんな葛藤を抱える経営者は、きっと少なくないでしょう。
社会の声を聞きすぎて、自分たちの色が薄まってしまう。
「好かれよう」とするあまり、本来のオリジナリティを見失ってしまう。
一見、正しいアップデートをしているようで、
気づけば、どこにも属さない“無色“になっている。
そんな現実を、私たちは見てきました。
白は、緊張感をはらんだ色です。
どんな色も受け入れながら、同時にどんな色にも染まりすぎない。
気高くもあり、寛容でもある。
その両義性こそが、白という色の本質なのかもしれません。
社会は今、「線引き」と「寛容」という矛盾する価値を
同時に抱えています。
境界を引きたい気持ちと、混ざり合いたい願い。
その間で揺れる私たちは、
白という色のもつ“矛盾の美しさ“に
あらためて目を向けるべきなのかもしれません。
白は、何もない色ではなく、
すべての可能性を秘めた色です。
混ざることを恐れず、変わることを厭わず、
他者を受け入れながら、
自分の輪郭を保つ。
私たちは、そんな“白のあり方“に、
これからの社会を生きるためのヒントを見出したいと考えています。
分断を恐れず、調和を諦めず、
矛盾とともに、美しく生きるために。
今日もあなたに気づきと発見がありますように