Vision-making

Vol.186

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ストラテジック・デザイナー

T.M.

ビジョンメイキングの力【後編】─組織とチームの未来を描くビジョンのつくり方

#ビジョン#ヴィジョン・デザイン#デザイン思考#ブランディング
Last update : 2025.11.6
Posted : 2025.11.6
前編のTIPS185では、「ビジョンとは何か」「なぜ必要なのか」、そして「ビジョンをつくる際に意識すべきマインドセット」について、実践する前に備えておきたい基礎的な知識を紹介しました。基礎を理解することで、ビジョンを抽象的な理想ではなく、組織や個人にとって実際に機能する指針として捉えられるようになります。

後編である今回は、前編の内容を踏まえて実際にどのようにビジョンを形づくり、日々の活動や経営に活かすのかを紹介します。
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1. ビジョンメイキングに欠かせない3つの材料

1-1. ビジョンとミッション、バリューとの相関関係

ビジョンには不可分な関係であるミッションと、バリューがあります。この3つの言葉を総称して合わせてMVPと呼ばれてます。

まず、ミッション(Mission)とは、「組織や個人の存在意義」を示し、「私たちはなぜ存在するのか」「何のために活動するのか」という根本的な問いに答えるものです。時間軸でいうと「現在」に位置付けられ、ビジョンやバリューの基盤となります。

バリュー(Value)は「大切にする価値観・行動規範」を意味します。これは特定の時点に限らず「普遍的に」存在し、日々の行動や意思決定において判断の基準となります。バリューは、ミッションを体現し、ビジョンを実現するために欠かせない行動指針といえます。

ミッション、ビジョン、バリューの相関関係をまとめると以下の図のようになります。

項目 意味 時間軸 関係性
ミッション(Mission) 組織や個人の「存在意義」「何のために存在するか」 現在 ビジョン・バリューの基盤となる。
ビジョン(Vision) 将来ありたい姿・目指す未来像 未来 ミッションを実現した先に描く理想像。
バリュー(Value) 大切にする価値観・行動規範 常に ミッションやビジョンを実現するための日々の判断基準。

つまり、ミッションが存在意義を示し、ビジョンが未来への理想を描き、バリューがその実現に向けた行動の規範を支えるという相互関係が成り立っています。これらの3要素が揃うことで、組織や個人は一貫性のあるアイデンティティの軸を持つことができるのです。

1-2. ビジョンを構成する要素

自分たちが目指す未来のあるべき姿・ビジョンを考える上で、最初に用意すべき3つの材料があります。それが以下の図に示す理念、方針、施策です。

・理念(Why)

ビジョンの根幹を成す理念は、「なぜその未来を目指すのか?」という価値観や存在意義を表します。ビジョンの動機づけを担い、組織の方向性を示す「軸」となります。理念は組織においては「心臓部」にあたり、すべての活動の”根拠”となります。

・方針(What)

「なぜ?」の部分である理念を明確にした上で、理念を実現させるために「どのような方向性で取り組むのか?」を示す指針がこれに当たります。ビジョンを実際の行動に落とし込むため、施策の優先順位や判断基準となる部分です。方針は理念を抽象的な理想に留めず、現実の方向性にするための、いわば「地図」となります。

・施策(How)

方針(What)をさらに具体化し、「どのような取り組みを実行するのか?」といったアクションプランに当たるのが施策です。組織やチームのメンバーが日々の活動レベルで実践できる行動指針を提供し、ビジョンを「言葉」→「行動」に移します。

要素 内容 キーワード
理念(Why) 自分たちはなぜ存在するのか 存在意義
方針(What) 何を実現したいのか 方向性
施策(How) どうやって実現するのか 戦略・行動

これら3つの要素が揃うことにより、ビジョンは単なるスローガンから「実現可能な未来像」へと進化します。

「理念(Why)」「方針(What)」「施策(How)」の3要素については、サイモン・シネックが提唱したゴールデンサークルの図と符合する点も多いので、より深い理解を得たい方は以下も参考にしてください。

1-3. ビジョンと経営理念の違い

ビジョンについて考えると、「経営理念とはどう違うのか?」と聞かれることがあります。実は経営理念や企業理念、そしてビジョンを混同してしまっているケースがよく見受けられます。経営理念とは、主に企業活動の目的を指し、企業の創業者が自らの事業に込めた思いや価値観、フィロソフィー(哲学)が該当します。「企業理念」という言葉も経営理念と同義のように扱われることがありますが、実は若干の違いがあります。経営理念は時代や外的要因によって変化しますが、企業理念は変化します。企業理念は、創業者の考えや想いを土台にして策定される、いわばDNAのような捉え方です。

経営理念は企業活動自体の目的を指し、ビジョンは会社そのものの将来における「在り方」を示したものだということを理解しておきましょう。

項目 ビジョン(Vision) 経営理念(Philosophy / Mission)
定義 将来ありたい姿・目指す未来像 企業の存在意義や価値観、経営の基本的な考え方
時間軸 未来志向(5年〜10年先の目標像) 常に変わらない普遍的な原則
役割 組織が進むべき方向性を明示し、社員や顧客を未来に導く 企業がなぜ存在するのかを示し、意思決定や行動の根本基準となる
性質 変化する可能性あり(時代や環境に合わせて更新) 不変性が強い(創業以来の精神を引き継ぐ)
具体例 「世界中の人々が健康で笑顔あふれる社会をつくる」 「人々の健康を守り、社会に貢献する」
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2. ビジョンマップの作成方法

2-2. ビジョンマップ活用のメリットと実践ポイント

ビジョンマップを活用するメリットとして代表的なのは以下の4つです。

①頭の中の抽象的なビジョンを共有化できる

→リーダーや経営層だけの頭の中にあった未来像を図解やイラストなど可視化することによって、メンバー全員が同じイメージを持てるようになる。

②行動と理念がつながる

→日々の業務やプロジェクトが、「大きな理念の実現にどう貢献しているのか?」といった具合に長期的視野で可視化されることにより、日々の仕事の意義がより明確になる。

③議論やフィードバックの土台になる

→ビジョンマップを紙やホワイトボードに書き出すことにより、「方針はこれでいいのか?」、「現状の施策は十分に具体的か?」といった問答や対話が促される。

④計画の進捗や整合性を点検できる

→施策が理念や方針からズレていないか?といったことを確認し、組織全体のバランスを再考、調整するチェックツールとしても役立つ。

ビジョンマップを実践し上記のメリットを享受する上で3つのポイントがありますので、以下に挙げておきます。

・可視化すること自体を目的とするのではなく、対話の起点にすること

→一度書いて終わりではなく、定期的に見直し・更新して「生きたマップ」として活用するのが重要です。

・全員参加で作るプロセスが大切

→トップダウンで作成するのではなく、メンバーが意見を出し合いながら作ることで、納得感と当事者意識が高まります。

・短期・中期・長期の時間軸を意識

→施策は短期的に動かせるもの、成果イメージは中長期的に目指すもの、といった時間軸の整理も加えると実効性が増します。

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3. ビジョン作成の6ステップ

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4. 「競争」から「共創」へ。これからの社会におけるビジョンの活かし方と姿勢

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5. ビジョンを「ただの言葉」にしないための実務チェック

せっかく作成したビジョンを「ただの言葉」にしないための実務チェック・ガイドを紹介します。自分たちの掲げようとするビジョンを見直してみましょう。

✔︎具体性を持っているか?

— 「誰に」「何を」「どのように」届く未来かを1〜2文で説明できるか。

✔︎測れる要素が入れられているか?

— 定性的でもよいが、追跡可能なアウトカム(影響指標)を設定されている。

✔︎きちんと行動に落とし込みがなされているか?

— 会議・採用・評価など、主要プロセスでビジョン関連項目を必須にする。

✔︎物語化されているか?

— 数値だけでなく、顧客や社員の具体的なエピソードで語れるようにする。

✔︎定期的に検証されているか?

— ビジョンと現場のズレを年1回はレビューし、言葉だけで終わっていないか点検する。

併せて、よくある失敗や注意点に自分たちが該当していないか?についても見直してみるといいでしょう。

<よくある失敗と注意点>

・抽象すぎて行動に繋がらない:美しいが何をすればいいか分からないビジョンは意味が薄い。

・現実と乖離した約束:達成不可能な約束は信用を失う。現実的な道筋と短期的マイルストーンを示す。

・掲げたまま放置:社内に組み込まれていないと、ただのPRに終わる。運用設計が必須。

・硬直化:環境変化により戦術は変わる。ビジョンの核(なぜそれが重要か)は堅持しつつ、手段は適宜更新する。

ビジョンは未来への約束

【前編】(TIPS185)と【後編】(本記事)の2回にわたり、「ビジョンとは何か」という基本的な定義から、その意義・役割、そして実際に組織やチームで形にしていくための方法論までを体系的に解説しました。

振り返ると、前編では、ビジョンの持つ意味や重要性を確認し、組織にどのようなメリットをもたらすのかを整理しました。さらに、経営層と現場の認識のズレや抽象的表現といったビジョン策定に立ちはだかる障壁を明らかにし、そのうえで長期的視点や共感、柔軟性といった「ビジョンを描くうえでのマインドセット」を提示しました。後編の本記事では、実践的なプロセスとして「ビジョンマップ」や「6つのステップ」を紹介し、組織が未来を描くための具体的な道筋を示しました。同時に、ビジョンを単なる言葉に留めず、日常業務・人材育成・社会との共有に活かしていく姿勢の重要性を強調しました。

また、「ビジョンは未来への約束であり、共創のための共有財産である」ということを忘れないでいたいものです。ビジョンを持たない組織は漂流してしまう一方、明確なビジョンを掲げ、実践と更新を重ねていく組織は、仲間や社会の共感を得ながら持続的に成長していくのです。

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