• Vol.136
  • DESIGN
  • 2022.04.11

ネイティブアメリカンの教えから見える「サーキュラーデザイン」

四月に入り満開の桜がとても美しいですが、春を感じたいにもかかわらず、いきなり冬のように寒い日があったりと、気候変動の影響を感じやすくなっているように思います。 今後も地球が存在し、持続可能であり続けるために、重要な概念である「サーキュラーデザイン」について調べてみました。

WEB DESIGNER

M.T.

リニアからサーキュラーへ

リニアからサーキュラーへ

サーキュラーエコノミー(循環型経済)社会とは、限りある資源を効率よく活用し、循環をさせていく社会のことを指します。ゴミが出ないようにリサイクルしたり、廃棄物が出てしまう場合は正しく処理したりすることなども、循環型社会のあり方に含まれます。

私たちはこれまで大量生産・大量消費・大量廃棄の社会で暮らしてきましたが、天然資源の枯渇化や、廃棄物による環境破壊の増大など、地球の持続可能性が問われてきています。近年では「SDGs(Sustainable Development Goals)」という言葉を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

リニアエコノミー社会、つまり直線的(Linear)にモノが流れていき、リサイクルされることなく使い捨てられていく社会から脱却し、循環的(circular)にモノが流れる社会に移行しようとする流れが世界的に強まってきています。

サーキュラーエコノミーとは

サーキュラーデザインとは

サーキュラーデザインとは、サーキュラーエコノミーを実現するために必要なプロダクトやシステムのデザインを指します。2010年に英国に設立されたエレン・マッカーサー財団が主導となり、サーキュラーエコノミーおよびサーキュラーデザインの推進を図っています。

エレン・マッカーサー財団によると、サーキュラーデザインには主に6つの戦略があります。

1)製品の長寿化…耐久性があり、修正しやすいデザインにすることで、長く使えるようにする。
2)製品からサービスへ…サブスクリプションなど、製品を「所有する」ことから、「利用する」システムに移行する。
3)循環型原材料の利用…再生可能プラスチックなど、再生できる素材を活用する。
4)脱物質化…電子書籍など、製品の利用価値はそのままに、モノとしての製品をなくす。
5)モジュール化…修理・交換・更新をしやすいような設計を行い、長期での利用を可能にする。
6)生物資源化…竹歯ブラシなど、製品を生物資源化することで生分解化を可能にさせ、地球への負担を減らす。

以上6つの戦略を通じてデザインを行い、サーキュラーエコノミーの実現を目指します。

ネイティブアメリカンの教え

ネイティブアメリカンの教え

ここで、ネイティブアメリカンの文化について触れたいと思います。ネイティブアメリカンには「7世代先の子孫を想い生きる」という教えがあります。

例えば一つの木を伐採する際にも、7世代先の代が困らないか考えてから木を切るということがあるそうです。物事を行う際の判断基準が、今を生きる自分達より、遥か未来を生きる代のことを考えた結果であるということですね。

サーキュラーデザインに当てはめる

ネイティブアメリカンにとってバッファローは貴重な食糧であったと同時に、毛皮や糞までも生活に必要な動物でした。

そのバッファローを捕らえた際には、「痛みなく殺し、彼の心臓は土に返し、残りのものは、すべて食べ、食べられないケンはドリームキャッチャーの糸にし、牙は首飾りにして彼が自分達のために死んでいったことを、称えるそうです。」(七代先の子孫を想い生きるインディアンの世界観 より)

これを先ほどあげたサーキュラーデザインの6つの戦略に当てはめて考えてみます。

  • 「彼の心臓は土に返す」→6)生物資源化
    文化的な文脈で解釈する必要もあると思いますが、心臓を生分解が可能なかたちで還し、環境の負担を減らしています。
  • 「食べられないケンはドリームキャッチャーの糸にする」
    ケンを再利用して、廃棄せずに新たなモノに活用しています。

必ずしも上記の6つ戦略に当てはまるわけではありませんが、「牙は首飾りにして彼が自分達のために死んでいったことを、称える」という部分に、私は特に興味を惹かれました。

機能的な価値だけでなく、文化的・精神的な価値を見出すという点は、デザインする際にもとても重要な視点であるように感じます。

人間も土に還る!?最先端の「たい肥葬」

こうしたネイティブアメリカンの「7世代先の子孫を想う」意識は、現代にも引き継がれています。

アメリカのワシントン州では、ベンチャー企業『RECOMPOSE(リコンポーズ)』社が、人間の遺体をたい肥にして埋葬する方法を開発しました。

一般的な埋葬法である火葬では大量の二酸化炭素が排出されていたり、土葬は土壌汚染に繋がっていたりと、地球への負担が大きいとされていました。そんな中、このたい肥葬では火葬や土葬と比べて、1トン以上二酸化炭素を節約できると試算されています。

方法としては、遺体をオーガニックウッドチップが敷かれた容器に入れ、その後30日間かけて分子レベルで分解し、土壌に変えていきます。土は遺族や友人が持ち帰り、通常の土と同様に草木を植えるために使ったり、持ち帰らない場合はRECOMPOSE社が提携する森林の育成に活用されます。

大地が限られている中、墓・棺を必要とする火葬や土葬ではなく、死後身体が大地に還るという、生物として自然なサイクルを実現させた例だと言えるでしょう。人間なら誰しも経験する「死」を循環型にデザインしたということではないでしょうか。

参考URL
人間を土に還す。シアトルで始まる、世界初の「堆肥葬」
RECOMPOSE 公式サイト

まとめ

サーキュラーデザインというと、廃棄資源をリサイクルして製品を作ったり、再生可能資源で衣服を作ったりするなど、リサイクル的な事例がよくみられますが、実はそれだけではありません。

広義の意味でのデザインを考えると、廃棄物を出さないような仕組みづくりや、そもそも製品を作ることから脱することも、デザインできるかもしれません。その意味で、サーキュラーデザインにはこれから無限の可能性が広がっていると感じました。持続可能な社会、そして世界を設計していくことがこれからのデザイナーには求められていくのではないでしょうか。


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