• Vol.126
  • MOVIE
  • 2021.5.19

TV-CMはオワコンなのか?

目まぐるしく進化していく映像業界において、ほんとうに人の心を動かす映像とは。 またそれは、どのようにしてつくられたものなのか。考えていきたい。

DIRECTOR

Y.K.

ポカリスエット「でも君が見えた」篇

ポカリスエット「でも君が見えた」篇

今、ポカリスエットのTV-CMが世間を賑わせている。
床が波打つ疾走感のある映像だ。

朝の情報番組の中で取り上げられ、演出したディレクターの方が
インタビューに答えていた。

その中で、とても印象的だった言葉がある。
「これからもTV-CMで実験していきたい」

常々実験的な試みを取り入れることによってインパクトのある映像を
つくってきた同氏の言葉ではあるが、多額の予算をかけたプロモーションの
実験が失敗で終わるわけにはいかない。

つまり、実験という言葉を使ってはいるが、当然勝算があってやっていると
思われる。

時代の流れ

私が映像業界に入った20数年前は、4マス媒体が力を持ち、広告映像と言えば
TV-CMだった。
その頃のディレクターの方たちも、潤沢な予算を生かし、TV-CM制作の中で
様々な実験的な表現を試みてきた。(試みる余裕があったのである。時代的に。)
そこからメディアやデバイスが多様化していく中で、予算幅も下に広がっていき、
“クオリティよりもクオンティティ”が求められるようになる。

そんな今、先ほどのポカリスエットのディレクターの言葉である。

ターゲットを細分化してマーケティングすることができるようになり、
その結果を数値化できるようになった現在でもやはり、感覚的な部分での“なにか”が
人の心を動かす。

それは時に実験的な試みや、ひらめきから生み出されたアイデア、制作者たちの情熱や
想いなどによってもたらされるのではないかと思う。

人間は論理的な思考をつかさどる左脳よりも、直感的な右脳に響いたことの方が
長く記憶していると言われている。
ダラダラと説明的な内容を聞かされてもすぐに忘れてしまうけれど、子供の頃に
体験したシーンをいつまでも覚えているということは、誰にでも一つや二つある
のではないだろうか。

クリストファー・ノーラン

クリストファー・ノーランという映画監督がいる。
70mmフィルムを使用するIMAXを採用し、CGを極力使用しない実物での撮影を好む。
デジタル全盛のこの時代に、アナログなアプローチにこだわるその作品は、
魂を揺さぶられる圧倒的な映像体験を与えてくれる。

それは、莫大な予算と、多くの才能が集まったからこそ実現できることだとも言えるが、
彼の思い描く世界観を全力で突きつけられた時、言葉では言い表せない読後感が漂う。

人の心を動かす映像とは

今や一言で映像と言っても、インタラクティブなものからVR、ARまで多岐に渡る。
アナログにこだわり続けることが正解ということではなく、その時々に応じた最適解を
見つければよく、そのための選択肢が増えたということだろう。

どんなに時代が変わろうとも、どんなにテクノロジーが進歩しようとも、
人の心を動かす映像には、必ず“なにか”がある。

それを求め続けながら、これからも映像制作に携わっていきたいと思う。

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