アジャイルってなに?


ムーブメントとしてのアジャイル
アジャイルを一種の開発手法と理解されている方は多いのではないでしょうか。しかしこの捉え方は、特定のフレームワークに従い、思考を停止させる危険性を孕んでいます。
一方、アジャイルを「マインドセット」と定義することで、誰かと衝突した際の言い訳に使うこともできます。
『みんなでアジャイル 変化に対応できる顧客中心組織のつくりかた(Matt LeMay 著、吉羽 龍太郎、永瀬 美穂、原田 騎郎、有野 雅士 訳、及川 卓也 まえがき)』(以下、本書)では、アジャイルをムーブメントとして捉えることが、手法とマインドセットの両方を変化させ、仕事を進めるうえでの自分の責任をより理解できるようになる、と解説しています。
手法としてのアジャイル
- マインドセットよりプラクティスが重視される
- アジャイルのプラクティスと方法はすでに他人が決めたものである
- チーム内の各自が、事前に定義された方法で協力し、相互に作用しなければいけない
マインドセットとしてのアジャイル
- プラクティスよりマインドセットが重視される
- アジャイルの価値と原則はすでに他人が決めたものである
- チーム内の各自が、それぞれにアジャイルな「マインドセット」を育まなければいけない
ムーブメントとしてのアジャイル
- マインドセットとプラクティスは容赦なくつながっている
- アジャイルの原則とプラクティスをどのように明確にし、自分のチームや組織に適用するかを決定する上で、自分には積極的な役割がある
- チーム内の各自が、共通の目標と価値観に向かって協力しなければいけない
本書6ページより「手法、マインドセット、ムーブメントとしてのアジャイル」
フレームワークに従っても何も変わらない
前章で、”アジャイルを手法と捉えることは、フレームワークに従うことの危険性を孕んでいる”と紹介しました。具体的にどういうことなのか、本書から抜粋して解説します。
アジャイルが現代の組織が抱える問題に対してどんなときでも使える革命的な解決方法だとしたら、それはすごく魅力的だ。だが、アジャイルの用語を使い、表面的にプラクティスを適用するだけでは、フレームワークの罠にはまることが保証されるようなものだ。「なぜ」と問わなければならない。アジャイルで意味のある変化を得るためには、人はグループで働かせ、自分たちのニーズやゴールを理解させ、そして現在のやり方がどうゴールの達成を阻んでいるかを理解させなければいけない。(本書25ページより抜粋)
アジャイルを意義あるものにするには、ゴールと課題を設定し、現状に対して常に問い続ける姿勢が大切なのです。
アジャイルの3原則
本書ではアジャイルの3原則として以下のように定義しています。
1.顧客から始める
アジャイルは効率や速さを向上させるための運用改善策とみなされることが多いですが、本当に大切な視点は顧客のためにどう協力しあうか、という視点です。
2.早期から頻繁にコラボレーションする
チーム内での情報共有手段を振り返ったとき、ツールを介した非同期コミュニケーションが、いちばんのコミュニケーション手段になっていませんか。
リモートワークなど物理的に距離がある場合だけでなく、メンバーが同じ場所にいたとしても、ツールに頼ったコミュニケーションになりがち、というチームは多いと思います。
こういったコミュニケーションの取り方は一見すると簡単に思えますが、積もり積もって時間と注意力を浪費してしまいます。
分断されたメンバー同士が横断的に集まり、一つのチームとして協力する姿勢が重要です。
3.不確実性を計画する
アジャイルは、不確実で急速に変化する世界の現実を認識するだけでなく、不確実性を乗りこなすのに役立つ実際の構造を提供します。
所感
今回本書を読んでもっとも感じたのは、どれだけ問い続けることができるかでアジャイルが成功するかどうか決まるということです。
2週間スパンでタスクを区切り、短時間のデイリーミーティングを実施しても、本質を問うことから逃げてしまっては、仕事をしているパフォーマンスに過ぎないのだと感じました。
アクションや、チームが良い方向に進んでいる兆候、悪い方向に進んでいる兆候の具体例が紹介されているため、手順書として参考になると思います。
アジャイルを実践したい方は、ぜひ読んでみてください。
参考:『みんなでアジャイル 変化に対応できる顧客中心組織のつくりかた』
Matt LeMay 著、吉羽 龍太郎、永瀬 美穂、原田 騎郎、有野 雅士 訳、及川 卓也 まえがき
オライリージャパン 発行
RECENT POSTS
Vol.198
From parent–child bonds to community: The future of education that nurtures diversity and designs relationships
Vol.197
Exploring the future of environmental design integrating vision, diversity, and a future-oriented perspective
Vol.196
Vision-making for diverse and future-oriented education: Interpreting the future of learning through environmental design
Vol.195
“One Health” and Japan — Toward an Era of Integrating Humans, Animals, and the Environment
Vol.194
The benefits and challenges of digital education in the AI era, and the future of learning

Vol.193
Vision-Making in the age of AI — How artificial intelligence is transforming the meaning of work and the nature of organizations









