採用はなぜ機能しなくなったのか|不確実な時代における組織と意思決定の再設計


1. 不確実な時代において、採用はなぜ難しくなったのか
かつて、採用の構図は比較的シンプルだった。
企業が条件とブランドを提示し、求職者がその中から選ぶ。
「選ばれる側」と「選ぶ側」の役割が明確だったからである。
しかし現在は、その前提そのものが崩れている。
AIによる産業構造の急速な変化、政治・社会の不安定化、そしてキャリアの前提条件の揺らぎ。
これらが重なった結果、求職者は「どの企業を選ぶか」という問いの手前で、
「そもそも何を基準に働くのか」すら決めかねている。
そして、揺らいでいるのは求職者だけではない。企業側も同様である。
・どのような人材が必要なのか
・組織として何を目指すのか
・何を判断軸とするのか
これらに明確な答えを持たないまま、採用活動だけが進んでいる。
つまり、採用における問題は労働市場ではなく、
企業内部の意思決定の不安定さにある。
にもかかわらず、多くの企業は依然としてそれを「市場の問題」と捉え、施策を追加し続けている。


2. 採用が機能しない、本当の理由
応募が来ない。質が低い。ミスマッチが起きる。
こうした症状に対して、多くの企業が打つ手は決まっている。
・採用サイトを改善する
・コンテンツを強化する
・SNSの運用を始める
・エージェントを増やす
これらが無意味だというわけではない。
しかし、これらが機能するのは、ある前提が満たされている場合に限られる。
それは、
「組織として、どのような人材を、なぜ必要としているのか」が定義されていることである。
採用は「情報発信」ではなく、「意思決定の結果」である。
・採用基準が曖昧であれば、判断はブレる
・組織の方向性が不明確であれば、メッセージは揺らぐ
・現場と人事が分断されていれば、ミスマッチは必ず起きる
どれだけ表現を磨いても、その内側で意思決定が定まっていなければ、採用は機能しない。
3. 採用は人事「だけ」の仕事ではない
ここで、一つの構造的な問題を指摘しておきたい。
多くの企業において、採用は人事部門の業務として位置づけられている。
もちろん、実務としてそれは必要である。
しかし、本来「どのような人材が必要か」を最も理解しているのは現場であり、
採用の成否を最も強く受けるのも現場である。
にもかかわらず、現実には次のような状態が起きている。
・要件定義は人事だけで行われる
・面接は形式的に流れる
・最終判断は現場の納得感を欠いたまま下される
この状態では、採用と事業の間に断絶が生まれるのは当然である。
問題は人事ではない。
採用を人事に閉じ込めている構造そのものにある。
4. Netflixの事例から、学べること・学べないこと
採用を意思決定として位置づけている例として、Netflixはよく引用される。
しかし、多くの企業はその本質を誤解している。
「Aプレーヤーを採用する」という言葉だけが独り歩きし、
その前提となる意思決定構造には踏み込まれない。
その結果、「基準のないAプレーヤー採用」という矛盾が生まれる。
Netflixの本質はスローガンではない。構造である。
・マネージャーが採用プロセスに深く関与する
・採用担当者をビジネスパートナーとして扱う
・採用判断の最終責任を現場が持つ
採用は人事の仕事ではなく、
「常に行われている経営活動」として組み込まれている。
ただし、この構造はそのまま輸入できるものではない。
重要なのは施策ではなく、思想である。
すなわち、
採用とは経営の意思決定であり、現場と分断してはならないという原則である。


5. 採用ブランディングの再定義
ここまでくると、「採用ブランディング」という言葉の意味も変わる。
それは、採用サイトをつくることでも、コンテンツを発信することでもない。
採用ブランディングとは、
組織の意思決定を一貫させ、その一貫性を内外に伝えるための設計そのものである。
具体的には、次のプロセスを経て初めて機能する。
・どのような人材を必要としているのかを定義する
・なぜその人材が必要なのかを言語化する
・どのような判断軸で採用するのかを設計する
・それをすべての採用接点に反映させる
内側の意思決定が定まっていない状態で表現だけを整えても、
そのズレは必ず露呈する。


6. 採用を機能させるための3つの条件
採用を機能させるために必要なのは、新たな施策ではない。
組織内部の構造を整えることである。
① 採用を経営課題として扱う
採用は人員補充ではなく、事業成長の前提である。
② 意思決定の軸を設計する
誰が判断しても同じ結論に至る状態をつくる。
③ 現場を意思決定に組み込む
採用と実務を分断しない構造をつくる。
採用の改善は、施策ではなく意思決定から始まる
不確実な時代において、採用が機能しないのは必然である。
なぜなら、多くの企業は意思決定の基準を持たないまま、採用施策だけを更新し続けているからだ。
採用を改善するために必要なのは、新しい施策ではない。
・どのような人材を必要とするのか
・なぜその人材が必要なのか
・誰がどのように判断するのか
これらを定義し、
組織として一貫した意思決定ができる状態をつくることである。
採用とは、突き詰めれば、
「組織が自分自身を理解しているかどうか」を問われる活動である。
そして、その問いに答えられない組織は、誰も採用できない。
施策の前に、まず組織の内側を整えること。
そこからしか、採用の本質的な改善は始まらない。
参考:https://dhbr.diamond.jp/articles/-/5391
もし現在、
・ブランドが機能していないと感じている
・組織や発信に一貫性がない
・何から整理すべきかわからない
このような状態であれば、一度立ち止まり、構造的に整理することを推奨します。
BOELでは、経営課題の構造化から意思決定設計までを対象とした初回ディスカッションを実施しています。
まずは現状の整理からでも問題ありません。
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