DESIGN

Vol.150

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K.K

Helvetica – A Timeless Western Typeface Loved Around the Globe

#font#typeface#Web design#design#Helvetica
Last update : 2025.11.6
Posted : 2025.11.6
When it comes to deciding a design direction, one of the most important building blocks is the choice of font. In this article, we introduce the history and characteristics of the western typeface called Helvetica — a classic that is loved all around the world.
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Two Typeface Designers

Helveticaは、1957年にスイスのタイプフェイスデザイナーであるマックス・ミーディンガー(画像左)とエドアード・ホフマン(画像右)によって作られたサンセリフ体(装飾のないゴシック体)の欧文フォントです。簡素で落ち着いた書体でありながら、説得力に富む力強さと普遍性が特長で、用途を選ばない幅広い汎用性があり、「特徴がないことが特徴」とも言われ、企業のロゴマークや公共交通機関のサインなど様々な場面で使用されています。
2人は当初Neue Haas Grotesk(ノイエ・ハース・グロテスク)という金属活字を共同制作していました。
Helveticaは、このNeue Haas Groteskをよりグローバルで親しみやすい名前に変更して、発売されたフォントです。

Research Journal「Max Miedinger」
MULTIMEDIAMAN「Eduard Hoffmann: 1892 – 1980」

Swiss Design Style

Helveticaを紐解くために、1950年代のスイスのデザインスタイルについて少し触れてみましょう。
1950年代のスイスは他のヨーロッパ諸国同様に近代化が進み、ポスターやチラシ・新聞・雑誌広告などの商業印刷が広まっていました。
デザインの概念が、芸術美から情報伝達へと変化したことで、可読性の高さとシンプルなカラーリングが特徴であるスイススタイルが一世を風靡しました。
見やすく伝わりやすいデザインが求められる時代背景の中、クセがなく可読性の高いHelveticaは "時代にフィットしたフォント" として支持されていました。

Characteristics of Helvetica

Helveticaフォントの特徴を見てみましょう。
フォントそのものに大きな特色を持たず、普遍的でどんなシーンにも馴染みやすいオールマイティ選手、といったところでしょうか。

■ ストローク(stroke)

スパッと水平方向に切られたストロークの端に、無骨さや無機質さを感じます。
このストローク処理は、Helveticaの類似フォント Arialとの見分け方としても着目される点です。

■ アパチャー(aperture)

また、アパチャーが比較的狭く作られています。
同じくサンセリフ体の定番フォントFuturaやMyriadと比較してみましょう。
Helveticaはアパチャーの開きが狭いことでやや柔らかさやデザイン性に欠けます。しかしそれにより、アルファベット単体の個性が抑えられ、可読性を高めています。

■ 大文字のR、小文字のa

大文字のRや小文字のaは、Helveticaの特徴を強く表しています。
Rにおいてはカーブのあるレッグが目に止まります。レッグはステムから出ている足のようなストロークを指します。
レッグが曲線を描くことでスペースを節約でき、隣の文字に干渉しないため均一にスペーシングが取れるメリットがあります。

サンセリフにおける小文字のaには2つの形があります。
Helvetica、Myriadは上部にフックのような装飾があり、Futuraは装飾のないシンプルな形です。
ここでも水平なストローク処理が徹底されており、一貫した規則性にきっちりとした印象を受けます。

Helvetica in Everyday Life

フォントの特徴に続いて、私たちの日常で目にしているHelveticaについて見てみましょう。

■ JR東日本、東急電鉄の駅名標

JR東日本や、私たちBOELのスタッフもお世話になっている東急電鉄の英語表記にはHelveticaが使用されています。
通勤や通学で鉄道を利用される方は、一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。

■ 身近な製品にもHelvetica

身の回りの製品にもHelveticaが使われています。
Post-itやevianなどのロゴはHelveticaをベースとして制作されています。

■ 親しみのあるコーポレートロゴ

Franfrancや無印良品、Panasonicのコーポレートロゴも、Helveticaがベースとなっています。
身の回りの様々な場所でHelveticaを見つけることができますね。

Why Is Helvetica Commonly Used for Railway Station Signage?

鉄道は、幅広い年代に利用されます。さらに近年インバウンドの急増により、海外の方の利用も増えています。
そのため鉄道の駅名標は、どんな年代でもどんな国籍の方でもハンデなく伝わる看板であることが求められます。

■ 幅広い年代や海外の方に情報を正しく伝える

もし駅名標の英語表記がセリフ体の場合、エレガントな土地というパブリックイメージを伝えられるかもしれません。
しかし、横線が極端に細いため、アルファベットを正しく判別することが難しいかもしれません。
また、駅名標の英語表記が幾何学フォントだった場合を考えてみましょう。
デザイン性は高いですが、「i」と「j」の判別のしにくさから、海外の方は駅名を間違えて読んでしまうかもしれません。

■ 日本語の母音が読みやすい

Helveticaについて考察する中で、小文字「aiueo」の判読性に気がつきました。
日本語には必ず母音が存在するため、アルファベット表記にするとaiueoが多く使われます。
例えば、長い路線名の【京浜東北線】をアルファベット表記に変換すると、【Keihin-Tohoku Line】となり、必然的に母音の羅列が多くなります。
事例として、Futuraでのアルファベット表記をみてみましょう。
Futuraは正円、三角形、四角形をベースに構成されたフォントです。「u」や「o」の下部は正円をベースとして作られているため、パーツの形が類似しており、遠くから見ると「u」と「o」の判別が難しいことが分かります。

一方、Helveticaは「u」にステムがあることで「o」と判別がつきやすいことが考えられます。

Helveticaが、鉄道の駅名標でよく使われる理由が分かってきました。
Helveticaの判読性の高さにより、正しい情報の伝わりやすさや誤読のしにくさを実現していると考えます。

Learning from Helvetica — The Invisible Traces

Helvetica は、あらゆる選択を可能な限りそぎ落としつつも、その形状ににひそやかな意思を宿すフォントです。無駄はないけれど無機質ではない、そのバランスの美しさこそが、世界中で愛され続ける理由の一端でしょう。設計の細部(ストロークの始点・終点の長さ、曲線の曲率、開口部の抑制など)を紐解くと、そこにはデザイナーたちの意図が残っています。
フォントの歴史や特徴を知った上でフォントを選ぶと、デザインに説得力が生まれると思います。
日常に広がるフォント探しをすると、色々な発見がありとても楽しいです。
皆さんも周りを見渡して、ぜひ素敵なフォントを探してみてください。
そうすることで、目に見える形以上の物語に出会うことができます。

【参考書籍】
『欧文書体2 定番書体と演出法』著者 / 小林 章
『デザインワークにすぐ役立つ欧文書体のルール』著者 / カレン・チェン
『もじ鉄 書体で読み解く日本全国鉄道の駅名標』著者 / 石川祐基

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