ユーザー行動をデザインする|UXの心理学と行動変容
多くの人は、見た目の美しさに代表される映像、イラスト、写真、文字などを使って視覚的に情報を伝達するデザイン、つまりビジュアルデザインを思い浮かべるかもしれません。
しかし、デザインとは単に形や色のイメージや美しさだけでなく、 機能や使いやすさ、そして体験をも含めた概念です。
例えば、どんなにおしゃれなアプリでも画面を操作することが難しければ、使いづらいと感じ、ユーザーはすぐに離れてしまいます。 しかし、直感的に使いやすく設計されていれば、ストレスなく継続して利用される可能性が高まります。
長く愛されるブランドへと成長させるために、本記事では 「人間中心」というデザインの考え方について、書籍『行動を変えるデザイン ―心理学と行動経済学をプロダクトデザインに活用する』をもとにご紹介します。
UXデザイン(ユーザーエクスペリエンスデザイン)がなぜ重要なのか? なぜビジュアルデザインにもこだわる必要があるのか? これらのポイントを解説していきます。


ユーザーの心の動きを理解する
1. ユーザーは瞬時に評価する
私たちは、「よく考えてプロダクトやサービスを選んでいる」と思いがちですが、実際には直感の心理が大きく影響しています。
例えば、新しいアプリをインストールするとき、多くの人は次のような基準で選びます。
・「なんとなく使いやすそう」
・「見た目がきれいで直感的」
これは、過去の経験やそれを見た時の最初の印象(ファーストインプレッション)に基づいて、瞬時に評価しているからです。
そのため、プロダクトやサービスの第一印象が悪いと、それを使う選択肢にすら入らない可能性があります。
2. ユーザーはできるだけ労力をかけたくない
人は、複雑な判断を避けるために ヒューリスティック(heuristics) を用いる傾向があります。これは「できるだけ簡単に判断したい」という心理的メカニズムです。
例えば、
・「1分で登録完了」と「詳細な情報入力が必要」なアプリなら、前者を選びやすい
・「ワンクリック購入」と「複数ステップのフォーム入力」なら、前者のほうがコンバージョン率が高くなる
行動を促すポイント:
・手順を減らし、直感的に操作できるUIを設計する
・不要な選択肢を減らし、シンプルにする
ユーザーの行動を決める6つの要因
1. 簡単なもの(認知負荷が少ない)
・ 難しいものより、すぐに理解できるものを選びたい
例:短い登録フォーム → ユーザーの負担が減る
アイコンが分かりやすい → 直感的に使える
2. 慣れているもの(過去の経験が影響する)
・「新しさ」よりも「親しみやすさ」が大事
例:いつも使っているSNSのUIに近いと安心する
日本人向けのECサイトでは「カートアイコンは右上」が自然
3. 綺麗なもの(ハロー効果)
・見た目が良いと「価値がある」と感じやすい
例:高級感のあるデザイン → 「信頼できる」「高品質」と感じる
シンプルなアプリUI → 直感的に「使いやすい」と思う
4. 報酬があるもの(ポジティブな体験)
・「成功体験」や「報酬」があると繰り返したくなる
例:ゲームアプリの「レベルアップ報酬」
ECサイトの「ポイント還元」
5. 失敗しないもの(リスク回避)
・「この選択は間違っていない」と安心させる
例:「返品無料」→ 安心して購入できる
「7日間無料トライアル」→ 試しやすい
6. 急ぎで対応する必要があるもの(優先順位が高い)
・今すぐ必要なものは、行動に直結しやすい
例:
「あと30分でセール終了!」→ すぐ購入しようとする
「今週中に申し込むと初月無料」→ 今すぐ申し込む
行動を促す5つの要素 CREATE アクションファネル
『行動を変えるデザイン ―心理学と行動経済学をプロダクトデザインに活用する』を元に、BOELにて再作成
出典:https://amzn.asia/d/fd7khsv
ユーザーが行動を起こすには、次の5つの要素を満たす必要があります。
Cue(きっかけ)
・行動を開始するトリガー。まずユーザーが認知することが必要です。また、「やってみたい」と思わせるには、心理的な負担(面倒・不安・迷いなど)を最小限に抑え、自然に行動へつなげる設計が必要です。
Reaction(反応)
・ユーザーがきっかけ(Cue)に反応するかどうかは、直感的な判断によって決まります。
この第一印象が良くなければ、行動につながることはありません。
また、直感的に判断された際に、信頼を得られるかどうかも重要なポイントです。
「これは怪しい」「本当に大丈夫?」と感じた時点で、多くのユーザーは離脱してしまいます。
Evaluation(評価)
・ユーザーは「このプロダクトやサービスを使うメリットがあるか?」を判断します。 価値が伝わらなければ、離脱してしまいます。
Ability(実行可能性)
・ユーザーが「やりたい!」と思っても、実際に行動を起こせるかどうかは、実行のしやすさ(Ability) によって決まります。 手間がかかると、ユーザーは簡単に離脱してしまいます。
Timing(タイミング)
・「気分が上がる」「満足感がある」など、行動の結果としてポジティブな体験を得られると期待できると、行動が早まる傾向 があります。
行動をデザインするには、「きっかけ(Cue)」を作り、ユーザーが反応(Reaction)し、価値を感じ(Evaluation)、実行しやすく(Ability)、適切なタイミング(Timing)で促すことが重要です。 これらの要素が 1つでも欠けると、ユーザーは行動を起こす途中で離脱してしまいます。 すべての要素を適切に設計すれば、ユーザーの行動を自然に促すことが可能になりますが、その過程で、ユーザーは常にさまざまな誘惑にさらされていることも忘れてはいけません。
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